高須幸雄  理事長  挨拶


  「人間の安全保障」フォーラム(HSF)は、すべての人の命、生活、尊厳を守る「人間の安全保障」は実践されてこそ意義があるとの考えを共有する研究者、学生が中心になって2011年東日本大震災の年に設立され、今年で14年目を迎えます。

 この間、被災者支援、子どもの未来館、学習支援、難民関連の連携・教育、学びの旅、各種セミナー、人間の安全保障指標、女性の就労支援、子どもの権利条約の普及などの活動を通じて、人間の安全保障の中核である「一人一人の尊厳」を守るための実践に努めてきました。このような人間中心の考え方は、「誰も取り残されない社会」を目指すSDGsの理念に繋がっています。

 世界を見れば、新型コロナウイルスの猛威に続き、ロシアのウクライナ侵攻に伴う食料価格などの世界的高騰により、特に開発途上国の女性や子どもなど生活基盤の脆弱な人に深刻な影響を与え、2030年を目指すSDGsの目標の達成が大きく後退しました。またイスラエル軍の攻撃によるガザ市民の死者数が昨年10月から半年で3万4千人にも達し、内13千人以上が子ども、1万人以上が女性です。常任理事国ロシアによる他国への武力侵攻はルールに基づく国際秩序を根底から覆す蛮行ですが、世界中で武力行使の敷居を下げてしまったのではないかと懸念されます。国に自衛権は認められていますが、人道法違反になりうる過剰な武力の行使は、人間の安全保障に対する正面からの攻撃で許すことはできません。人間の安全保障の視点からも、これらの危機に対する取り組みの強化が重要です。

HSFとしては、引き続き人間の安全保障への理解・支持を増やし、「誰も取り残されない社会」を日本で実現するための活動を引き続き推進する予定です。具体的には、教育・研究・連携・交流活動などを継続します。「人間の安全保障指標」については、市町村別の優先課題の可視化の第1弾であるSDGs宮城モデル」に続き、第2弾として愛知県内の54市町村別の指標を完成させ、名古屋市で本年2月発表会を開催しました。今般SDGsと地域社会』(明石書店)の英訳版の完成を機に、国内外の地域社会での発展拡充を目指します。また、東日本大震災で大きな被害を受けた気仙沼市で、女性のIT就労支援、子どもの居場所づくり、子どもの権利条約の啓発活動を継続します。

 子どもの権利条約は昨年4月施行された子ども基本法の背骨ともいうべき重要な原則であり、すべての子どもが学習してほしいと思います。その一助として、学習のための『活用マニュアル』を作成しましたので、関心のある方は是非このサイトでご覧ください

HSFの活動に賛同してくださる皆様のご協力に心から感謝し、引き続き人間の尊厳を守るための活動への支援をよろしくお願い申し上げます。

 

理事長 高須幸雄 

2024年5月

理事長略歴

現在、国際連合事務総長特別顧問(人間の安全保障担当)、日本ユニセフ協会副会長、

中部大学客員教授、前国連事務次長(行政監理局長)、元国際連合日本政府常駐代表(国連大使)