SDGsを地域社会で実現しよう!
『SDGsと地域社会』出版記念シンポジウム開催
2023年3月18日(土)、エルパーク仙台において、「SDGsを地域社会で実現しよう!—『SDGsと地域社会』出版記念シンポジウム」を開催しました。仙台では朝から雪が舞うなか、SDGsを宮城と全国の現場で実践するにはどうすればよいか、人間の安全指標をどのように役立てていったらよいかについて、書籍を手に取りながら、対面とオンラインあわせて70名以上が参加して熱く議論しました。
ウィメンズアイの五十嵐光さんの司会のもとで、まず、SDGs市民社会ネットワークの新田英理子さんからご挨拶を頂戴しました。その後、HSF理事長の高須幸雄さんが「SDGsを地域で実現するために」と題する基調講演を行いました。そこでは、SDGsを国別ではなく、都道府県、市町村、そして地域の現実にまで掘り下げて実践することの大切さ、尊厳を軸に「誰も取り残されない社会」という理念を目指すべきこと、人間の安全保障指標が都道府県別から市町村別(宮城モデル)に進化してきたこと、そして気仙沼において地域の課題に取り組む実践が進んでいることなど、書籍『SDGsと地域社会』を素材に、多面的な話題提供をしていただきました。地元でSDGsの実践を進めている宮城県内外の市民の心に響く講演でした。
そのあと続いて、シンポジウム「SDGsを地域社会で実現しよう!」を実施しました。同志社大学の峯(HSF理事)の司会で、NPO、ビジネス、自治体、アカデミアのそれぞれの立場から、貴重な知見が表明されました。前半の三人は、気仙沼での取り組みを紹介しました。ウィメンズアイの石本めぐみさん(HSF理事)は、女性と子どもを取り残さないHSFの気仙沼プロジェクトの概要、そして指標によって問題が可視化されるとともに、人びとがつながっていく様子を紹介しました。気仙沼在住の日本青年会議所の尾形長治さんは、青年会議所がSDGsを推進する活動に取り組んでいることを指摘したうえで、女性が働きやすい職場を実現させる尾形さんご自身の会社の取り組みを報告しました。気仙沼市議会議員の三浦友幸さんは、大谷海岸の防潮堤建設をめぐり、推進か反対かではなく、住民を中心にすべての関係者が粘り強く意見を出し合って交渉することで、砂浜と景観を取り戻すデザインの防潮堤が実現したことを美しい写真付きで紹介しました。
シンポジウム後半では、とみや子育て支援センター所長の猪股純子さんが、ユニセフと連携しながら「こどもにやさしいまちづくり」を目指す富谷市の取り組みを、子どもたち自身が自治体の政策立案や評価に生き生きと参加している様子をまじえて、詳しく紹介しました。最後に宮城学院女子大学の天童睦子さんが、災害女性学の視点から、個人のエンパワーメント、人びとのつながりのエンパワーメントを構造的不平等を正していく制度的確信につなげていく三層のダイナミックな実践の姿を、わかりやすい図で提示しました。以上をふまえ、SDGs市民社会ネットワーク新田さんが、国連でのSDGs合意プロセスを紹介しながら、これから宮城モデルが日本各地の指標づくりとつながっていく展望を示しました。その後、会場での活発な質疑応答を経て、2時間のイベントが終わりました。宮城モデルがひとつの区切りを迎えるとともに、気仙沼プロジェクトなど地域の実践が着実に進んでいることを実感しながら、参加者はそれぞれの場所に戻りました。
当日の発言者のパワーポイントは次からダウンロードしていただけます。じっくりご覧ください。
(文責・峯陽一)