「子どもにやさしいまち―気仙沼で育つ子どもの幸せを考える」集い



 

 

 2021年12月4日、HSFは、「誰も取り残されない気仙沼」実現プロジェクトの一環で、宮城県気仙沼市と気仙沼市教育委員会と共催で、「子どもにやさしいまち―気仙沼」をテーマとする市民の集いを、気仙沼市中央公民館で開催しました。

 東日本大震災で津波被災した中央公民館は移転新築され、12月1日にグランドオープンしたばかりです。今回の市民の集いは、同館のホールを使った初めての民間イベントとして開催しました。

 

 第1部では、はじめに、気仙沼市の菅原茂市長が開会挨拶を行い、包括連携協力のための三者協定締結までの経緯について説明されました。また、「誰一人取り残されない気仙沼」の実現に向け、子どもの生活、子どもの権利をしっかり守って、子どもたちの育みをしていきたいと意気込みを述べられました。

 つぎに、高須幸雄・HSF理事長が、SDGsは子どもの幸福にも関連が深く、ユニセフのレポートカード16で、日本の子どもの精神的幸福度が先進国38か国の37位という極めて残念な結果になったのは、学力中心の学校での競争主義、多発するいじめ、家庭の経済状況などが要因とみられ、気仙沼を子どもにやさしいまちにするため、一緒に考えたいと訴えました。

 ついで、大谷美紀子・国連児童権利条約委員会委員長が、子どもは一人の人間として大人と同じ価値をもっており、権利の主体と考えることが重要であると述べ、「誰も取り残されない」社会の実現には、子どもの権利を考えることが重要であると、子どもの権利条約の意義を強調されました(ビデオメッセージ)。

 最後に、甲斐田万智子・国際子ども権利センター代表理事が、これまでのご自身のご活動を踏まえ、講演を行われました。子どもの権利を知ることで子どもたちが一人で悩まず、いきいきと活躍できるようになること、権利を認めることはわがままにすることではないことを説明し、自分の意見を言っても良いのだと自覚することの重要性、子どもの声や意見を聞くことが不可欠であることを強調しました。

 

 第2部の「気仙沼の子どもをめぐる座談会」では、神林俊一・一般社団法人プレーワーカーズ理事の司会進行で、佐藤絵里(障害児親子サークルコミュニティー広場ふぁみりあ代表)、中村みちよ(一般社団法人フリースペースつなぎ代表理事)、菊田幸子(大島児童館児童厚生員)、尾形浩明(気仙沼市教育委員会学校教育課長)各氏にパネリストとしてご登壇いただきました。まず、司会より、気仙沼の子どもを対象とした子どもの権利に関するアンケート(HSFがプレイワーカーズに委託して実施)の結果について説明の後、現場レベルで子どもたちに関わっているパネリストが、それぞれの立場・視点から、障害を持つ子供も含め多様性の尊重、不登校のマイナスイメージの払しょく、児童館の役割、居場所・遊び場の重要性など、子どもをめぐる多様な課題について議論を深めていただきました。また、甲斐田さんはコメンテーターとして、子どもの多様性を認めることの重要性を強調しました。

 

 閉会の挨拶で、小山淳・気仙沼市教育委員会教育長は、教育委員会の取り組みについて、これまでは得てして「出来ることから」になりがちであったが、「しなければならないこと」へ変換が必要かもしれない、子どもの声を聞く努力をとことんまでやってきているのか、居場所の重要性を十分追求できていたのかを振り返って、今後、議論を踏まえた取り組みをしていきたいと述べられました。

 

 今回の集いには、百数十名の市民の方々にご来場いただきました。退出時のアンケートでは、「子どもの声をゆっくり聴くことの大切さを改めて感じた」「子どもたちにもっと遊び場や居場所が必要だと感じた」「大人の意識を高める必要がある、さらに子どもの権利条約についての勉強会が必要」「子どもを大事にするために、大人の生活を保障することが大切」「具体的に子どもたちにどのように接していけば良いか考えさせられた」などのお声をいただいています。

 

 今回の集いの開催に際しご尽力をいただいた関係者の皆様、誠にありがとうございました。HSFは、引き続き、気仙沼プロジェクトの一環で、気仙沼市の学校の内外において、子どもの権利条約についての理解を深めるための活動を続けていく予定です。